セッション
原題:Whiplash 2014年 アメリカ 107分
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング
ストーリー・概要(映画.comより)
2014年・第30回サンダンス映画祭のグランプリ&観客賞受賞を皮切りに世界各国の映画祭で注目を集め、第87回アカデミー賞では助演男優賞ほか計3部門を受賞したオリジナル作品。世界的ジャズドラマーを目指して名門音楽学校に入学したニーマンは、伝説の教師と言われるフレッチャーの指導を受けることに。しかし、常に完璧を求めるフレッチャーは容赦ない罵声を浴びせ、レッスンは次第に狂気に満ちていく。「スパイダーマン」シリーズなどで知られるベテラン俳優のJ・K・シモンズがフレッチャーを怪演し、アカデミー賞ほか数々の映画賞で助演男優賞を受賞。監督は、これまでに「グランドピアノ 狙われた黒鍵」「ラスト・エクソシズム2 悪魔の寵愛」などの脚本を担当し、弱冠28歳で長編監督2作目となる本作を手がけたデイミアン・チャゼル。
ドラムスティックに血がにじむ!ド根性音楽劇!
いや〜面白かったです。これ。
「こんなのジャズじゃない!」とか色々と批判を買ったようですけど、
良くも悪くも印象に残る映画という点では群を抜いていると思います。
全編にわたって音楽学生ニーマンが鬼教師フレッチャーにシゴかれるという内容なのですが、とにかくフレッチャーの暴君っぷりが突き抜けてます。
ドラムを叩くニーマンの耳元で「(テンポが)速い!」「遅い!」「速い!」「遅い!」と怒鳴りまくり、
挙げ句の果てにイスを壁にぶん投げるという…
もう笑っちゃいました。
ジャズバンドのドラマー枠をかけて争う3人にかわるがわるドラムを叩かせては罵声を浴びせまくるシーンも面白かったです。
まじめに見ると人種差別・人間性否定この上ないハラスメントなんですけどね…
やり過ぎのあまり、ここでもやっぱり笑っちゃいました。
暴言のレパートリーの豊富さと理不尽さは、何となくドラマ『glee』のスー先生をほうふつ〜。
登場した時は気弱そうな奴だと思っていた主人公ニーマン君も、実はかなり負けん気が強く、フレッチャーに食らいついていきます。
スティックを握る手に血が滲むまでドラムの練習に明け暮れ、恋人すら手放す(自分から告ったくせに!)彼にも、フレッチャー同様の狂気を感じました。
最後の方、フレッチャーの「復讐」には目ん玉飛び出そうになりましたが、その衝撃を飲み込んで津波のようにクライマックスに突き進んでいくかんじが不思議と気持ちいい。
矛盾と理不尽さを匂わせながらも、熱狂的であり爽快感もある。
なんというか…「映画を観賞した」というより、「スポーツ観戦した」気分になるとでもいいましょうか。
珍しいタイプの作品でした。
キッチン・ストーリー
原題:Salmer fra kjokkenet 2002年 ノルウェー・スウェーデン 95分
監督:ベント・ハーメル 脚本:ベント・ハーメル、ヨルゲン・ベリマリク
出演:ヨアキム・カルメイヤー、トーマス・ノールシュトローム、ビョルン・フロベリー、リーネ・ブリュノルフソン、スブレエ・アンケル・オウズダル
ストーリー・概要(映画.comより)
50年代にスウェーデンで実際に行われたという“独身男性の台所での行動パターン調査”をヒントに、調査員と調査対象者となった2人の中年男性の交流をユーモラスに綴ったコメディ。監督は、「卵の番人」のベント・ハーメル。
ノルウェーの田舎で一人暮らしをしている、年老いたイザックの元へ、フォルケという男がやって来た。主婦の台所仕事が世界的に重要視され始めた1950年代初頭。キッチン棚の大きさや調理台の高さなど、台所の国際的な規格が出来上がっていた。そこでは製品開発など多くの面で「行動心理学」が大きな役割を果たしており、1944年にスウェーデンで発足した「家庭研究所」では、「ノルウェーとフィンランドにおける独身男性の台所での行動パターン」についての調査が開始されようとしていた。フォルケはその「家庭研究所」の調査員であり、トレーラーで国境を越えてスウェーデンからノルウェーにやってきたのだった。
おじさんによる、おじさんの観察
「独身男性の台所での行動パターン調査」とやらがすごい。
部屋の隅っこにプールの監視台みたいなのを設置して、その上から被験者の行動(動線とか)を手書きで記録していくんです。
とってもアナログ〜!
被験者のイザックは「馬がもらえる」という理由で調査に応募するんですけど、
たとえ馬がもらえたとしても、自分だったら絶対無理。
知らない人に行動を観察されるなんて、恥ずかしすぎる〜!
そもそも、観察されても動きませんけどねコタツの中から。
ず〜〜〜〜っと見てますけどねテレビを!
そしてそもそも、馬をもらっても飼えないし。お金だったら…うーん、どうしましょ。
現代だったらこんな調査ありえないだろうなあ。
期間中、調査員は被験者の家の外のトレーラーハウスで寝泊まりし、被験者とはお互い会話してはいけない等のルールがあるんですが、
調査が進むうちに、なんとな〜く会話するようになる2人。
そりゃ、人間同士ですもんね。ロボットを置いているわけじゃないんだから、自分のテリトリーにいる人間を無視できないのはよく理解できます。
人間って自然とコミュニケーションをとろうとする生き物なんだなと思いました。
地味めの映画ですが、おじさんがおじさんを観察するという妙にシュールな絵は面白かったです。
フィルス
原題:Filth 2013年 イギリス 97分
監督・脚本:ジョン・S・ベアード
出演:ジェームズ・マカヴォイ、ジェイミー・ベル、イモージェン・プーツ、ジョアンヌ・フロガット、ジム・ブロードベント、エディ・マーサン、シャーリー・ヘンダーソン
ストーリー・概要(映画.comより)
「トレインスポッティング」原作者として知られるアービン・ウェルシュの小説を映画化し、悪徳刑事の巻き起こす事件をジェームズ・マカヴォイ主演で描いたクライムコメディ。同僚や友人を陥れる裏工作や残業の不正申告が得意で、売春、不倫、アルコールやコカインにも手を出すスコットランド人刑事ブルース・ロバートソンは、ある日起こった日本人留学生殺人事件の捜査を担当することになる。初動捜査では目撃者が見つからかったその事件を解決してみせ、出世しようと目論むブルースだったが、捜査を進めるにつれて過去の自分と向き合うはめに。やがて目撃者とされる謎の女の存在が浮かび上がり……。
悪徳刑事の末路
『ウォンテッド』等、普通の主人公の青年を演じたりもするジェームズ・マカヴォイですが。
やっぱりこの人、顔が悪人。
圧倒的に悪人ヅラ。
なので今回はとってもハマり役でした。
なにせ、主人公がクズ!刑事なのに不正しまくり、ドラッグやりまくり。
おまけに同僚の奥さんと不倫してるわで、もう私生活がメッチャクチャ。
クズすぎて、刑事の立場を利用し少女にフェラを強要するシーンでは思わず「この……クズ!」と言いたくなりました。
吐きかけてやりたかったです唾を。ぺっ。
刑事として事件を追ううちに主人公のある秘密が明らかとなり、最終的に苦悩した主人公が首をくくってジ・エンドとなるんですが…
なんでしょう。ここまで悪党だと同情の余地がないというか。
自業自得感が否めませんでした。
死に際の台詞「俺のルールに例外なし」も、よく意味がわかりませんでしたし。
まあ、ここまで主人公を見放したくなるということは、ジェームズ・マカヴォイがそれぐらい見事にワル役を演じていたということで。
マカヴォイさんは素晴らしいのであった。
ちなみに「フィルス」というのは”クズ”的な意味で、主人公の名前というわけではありませんでした。